私はシンセサイザーが好きである。

なんと言っても“シンセサイザー”という響きがかっこいい。7文字中4文字もSの母音(Z含む)が占めている。
見た目もかっこいい。部屋にあるシンセサイザーのパネルを眺めると、一度も触ったことのないボタンがいくつかある。なぜこんなにボタンやツマミがいっぱいあるのだろうか。
シンセサイザーは私の時間を奪っていく。触ると次に時計を見たときには短針の角度が90度ズレている。いやいや、まさかそんなことは起こるまいともう一度触っていると短針が元の位置に戻っている。
そんなに時間を奪われているのに演奏は一向に上達しない。そう、演奏に時間を費やしているのではないのだ、音作りに没頭してしまうのだ。

シンセサイザーとはそんな楽器である。少なくとも私の中では。

そんなシンセサイザー好きになる一端をになったのが、このKB SPECIAL(キーボード スペシャル)通称キースペである。

KB SPECIAL通称キースペ、編集部としては略称はKBS(ケービーエス)と呼んでもらいたかったようだが、浸透せずいつまでもキースペと呼ばれていた覚えがある。
キースペは1985年4月に創刊、このとき創刊第1号ではなく3号だったそうである。1号、2号はそれぞれ「ロッキンf」という音楽雑誌の別冊として発売されていたようだ。

【参照】国立国会図書館サーチ
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000041488-00

その後、2000年4月刊行の183号をもって廃刊、「プリプロダクション」という新しい雑誌へと移行されていった。

キースペの特徴としてはキーボディストを中心としたアーティスト紹介、キーボードや付随する機材の紹介、アーティストやマニュピレーターのコラムなど、ごくごく普通のキーボード専門誌である。
特徴はと言っておいて普通の専門誌だというのもおかしな話だが、キースペ同様にキーボード専門誌として有名なキーボード・マガジン(通称キーマガ)が中級者~上級者向けの記事が多いのに対し、キースペは初心者~中級者向け記事がメインだったのでとっつきやすい専門誌の入門編という意味で普通の専門誌というのが特徴ではないだろうか。
なにしろ私自身がこのキースペを読み込んでシンセにハマっていった。新製品紹介を見ながら「このシンセとあっちのシンセを2段に重ねて~」などとキーボディストなら誰もが一度は想像する自分なりのライブセッティングなどと妄想を繰り広げていたものだ。

このサイトではキースペ本誌を取り上げて記事の内容を紹介しつつ、当時の背景やシンセサイザーの軌跡を考察していこうと思う。
令和元年現在では演奏・録音・編集と、音楽制作におけるほぼ全ての工程を1台のPCを使って完結することができる。シンセサイザーも実機を持たずともソフトシンセで事足りてしまうこともしばしばある。しかし、現在でもシンセサイザーの新製品は発売されているし、今は過去の名機のリバイバルが盛り上がっており毎シーズンおもしろい製品が生まれている。いままさにシンセサイザーの新時代を迎えようとしているのではないだろうか。

ここまで長々と講釈を垂れていたが、実は過去の雑誌が本棚を占領しており整理したい、だが捨ててしまうのもなにかもったいない、、、ということでサイト上にアーカイブしていこうという算段である。ぜひお付き合いいただきたい。